社長ブログ

2021年 激変する環境下で必要なCRM戦略の見直し

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昨年は色々な分野で驚くべきことが次々と起きるまさに激動の一年でした。2021年が皆様にとって良い一年になりますよう、心からお祈りいたします。

昨年の4月に私はこんなコラムを書きました。
「コロナウイルスで顧客コミュニケーションはどう変わるのか」
https://directus.co.jp/beingdirect/2020/04/09/customercommunication
コロナ禍での米国企業の顧客コミュニケーションに関してGartnerのコンサルタントが書いた記事を紹介したものです。
当時すでに米国では急速な感染拡大を受けてNYのロックダウンが始まり、その緊迫感は日本とはずいぶん違っていました。
「この状況下で顧客にとって意味のない・役にも立たない情報を送ることはブランドを棄損する」というメッセージにはロックダウンの中で不安に苛まれて暮らす筆者の実感がこもっていて、説得力がありました。

あれから約8か月。日本での感染も昨年末からは急激に拡大し、事態の展開は予断を許さない厳しいものになっています。しかし私たちはこの状況に浮足立つことなく、ここまでの環境変化をきちんと分析して冷静に対応していくことが必要なのだと思います。

コロナ禍で起きたCRMの環境変化

この一年でCRMにおける顧客コミュニケーションを取り巻く環境は大きく変わりました。
(色々なユーザーデータが存在する現在、CRMといっても対象は顧客のみとは限りませんが一応こう呼びます。)

まずオンラインでの新規顧客、見込客が増加したため、必要に迫られてオンラインでのCRMを強化する企業が増えました。今までと違う新しい顧客層に対してコミュニケーションの内容そのものを見直すケースもありました。
また人々がネット上で過ごす時間が増えたためだと思いますが、弊社クライアントの多くでメールの開封率・クリック率が上昇しました。

次にCRMで活用できる1to1コミュニケーションチャネルの多様化が大きく進展しました。web接客ツールの普及が進み、アプリが存在感を高め、LINEの可能性も広がりました。チャットボットの活用も進みましたし、一方ではDMの見直しも起きました。リテールビジネスではzoom接客やSNSを通じたライブコマースなど、新しい手法が次々と生まれました。これらの変化はコロナ以前から起きていた流れですが、ずっと「来るぞ、来るぞ」と言われていてなかなか進まなかった動きがコロナに背中を押されて一気に加速した感があります。

戦略の優劣が勝負を決める

これらを踏まえて、2021年CRM領域においては顧客コミュニケーション戦略の優劣が結果を大きく左右することになると思います。
戦略が重要だというのは当たり前のことですが、一昨年ぐらいまではマーケティング全体の中でCRMの優先順位も低く(ということは予算も少なく)、打ち手も限られていたため、やるべきことは業界によって大体決まっていました。ECであればちゃんと顧客に合ったメールを出して、MAで「かご落ちメール」のような鉄板施策を実装する、というレベルです。(もちろんそれをきちんと実行するだけでも大変です。)
ところが今は顧客の層も広がり、打ち手の選択肢も多岐にわたっています。CDPやMAといったマーケティングインフラの整備も進んできています。どこにフォーカスして何をやるべきかは企業ごとに大きく異なります。
目新しいツールの活用で他社が成功している事例を聞いて、前後の文脈を無視して飛びついて失敗するというケースは以前よりも増えると思います。

担当されている方はよくご存じですが、CRMの顧客コミュニケーションというのはメールだけでも運用に相当手間がかかります。最近では顧客の動きや状況変化に応じて100以上のシナリオをMAで自動実行している企業も増えてきましたが、そこまでいくと今度は全シナリオのPDCAまでは手が回りません。メンテナンスだけで精一杯です。そこにアプリやLINEまで組み合わせてクロスチャネルで全体を最適化、というのはポンチ絵では描けても運用は回りません。

そうなると当面の現実的な解は、「特定の顧客セグメントや購買ファネル上の特定段階にフォーカスして集中的にリソースを投入し、緻密なコミュニケーションシナリオを実装してKPIをモニタリングしながらチューニングを繰り返す。それ以外はできるだけシンプルな施策を確実に運用する。」というものになると思います。

ディレクタス式 戦略の作り方

ここで顧客コミュニケーション戦略が本来の役割を果たすことになります。
要は「誰に」「何をゴールとした」コミュニケーションを行うのか。

ご参考までに、弊社では顧客コミュニケーションの戦略を
・どんな目的を達成するために(目的・KGI)
・誰に対して(ターゲットセグメント)
・どんな態度変容・知覚変容をゴールとして(コミュニケーションのゴール・KPI)
・どんなコミュニケーションを実行するのか(HOW)
というふうにまとめることにしています。(セグメントは複数設定することもあります)
とてもシンプルですが、そうでないと共有も実行もできないと考えています。

目的とKGIがはっきりしていれば、KGIにインパクトを持つ顧客セグメントが分かります。(あまり細かく分けず実効性のあるセグメンテーションが重要だと考えています)
ターゲットとする顧客セグメントが明確であれば、リーチするために最適なチャネルの組み合わせや必要なコンテンツが自ずと決まってきます。
適切なゴールとKPIが設定できていれば、HOWの部分は仮説検証のサイクルでブラッシュアップが可能です。(というか、本当に適切なゴールと実効性のあるKPIを設定することができれば半分は成功したも同然だと思います。)

 

というわけで、重要性が増し複雑化したCRM環境にあって目的を達成するには、多くの場合リソースの集中投入が必要で、それには明確な顧客コミュニケーション戦略が不可欠である、というのが本稿の結論です。さらに今のような変化の激しい環境下では、素早い意思決定のためにもその拠り所となる戦略が重要だと思います。
当たり前の理屈ではありますが、当たり前のことを本当に実行するのはなかなか大変です。ディレクタスは戦略策定から実行支援まで、必要な部分を「伴走型」でお手伝いします。
本年も引き続きよろしくお願いいたします。

この記事を書いた人

岡本泰治 株式会社ディレクタス 代表取締役

京都大学卒業後、株式会社リクルートを経て1993年ディレクタスを設立。
航空会社や自動車メーカーなど大手企業のEメールマーケティング戦略を立案・実行し、近年ではマーケティングオートメーション(MA)の導入支援やシナリオ設計、MA導入後のOne-to-Oneクロスチャネル展開設計など、常に最新のソリューションと長年培ってきたノウハウをもとにOne-to-Oneマーケティングを推進。