社長ブログ
古くて新しいマーケティングテクノロジー活用問題
「岡本さん、”マーケティングオートメーション”って言うけど全然自動じゃないじゃん」
2015年頃、弊社が国内導入を進めていたBtoC向けのマーケティングオートメーション(MA)を導入してくださったクライアントが、運用が始まって冗談交じりに発した一言です。
クライアント:「もっと色々自動でやってくれるのかと思ったけど、結局人間がシナリオ考えて全て手動で設定しなきゃいけないんだね」
岡本:「その通りです(そりゃそうですよww そこは人間が考えないと)」
クライアント:「あと複雑なセグメントを作るにはSQLを書いて抽出する必要があるんだよね」
岡本:「そうなんです(逆に言えばSQLさえ書けば複雑な抽出が手元で自由にできるなんて、凄いことだと思いますよ!)」
クライアント:「まあ新しいことやるんだから仕方ないけど、全然楽にはならないんだよなあww」
岡本:「ですね…仕事増やしちゃってすみませんww」
そんな牧歌的な会話を交わしてから早や6年。
データに基づいて最適化されたパーソナライズドコミュニケーションは「顧客体験」を構成する要素として益々重要性が高まっています。
マーケティングオートメーション(MA)の活用は当たり前になって100種類以上のシナリオを実装している企業も珍しくなく、さらにLINEやアプリ、web接客などコミュニケーションチャネルが増えて運用ツールも増え…。ということでその運用は当時よりもさらに複雑化して高負荷になっているのが実情です。DXの掛け声もあってテクノロジーインフラの導入整備が急速に進み、デジタルマーケティングの課題はテクノロジーの導入ではなくその活用にシフトしているわけですが、これが簡単ではありません。
「本当のマーケティングオートメーション」は実現できるのか?
本来は分析から得た仮説に基づいてテストを繰り返す「仮説検証型のPDCAサイクル」を素早く回したいところですが、実際は既存シナリオの見直しもままならないケースが多くあります。
私共も含めデータマーケティングに携る人の多くの時間は、残念ながら施策の実装作業に費やされているのが実情です。中でも最も手間がかかって難易度が高いのがターゲットセグメントの抽出でしょう。ツールが何であれSQLのスキルは必須で、人材の確保にも苦労します。「SQLなしで簡単抽出」を謳うツールもありますが、そのためには当然データ構造を事前に整えておく必要があるわけで、今度はそちらが大変だったりします。
今年はCDPに集約したデータの分析から仮説立案、施策の企画、ターゲットセグメントの抽出、各種ツールによる施策実行までの一連の流れをスピーディーに回すための組織体制や仕組みづくりがより重要な課題になると思います。複雑で実運用でのPDCAサイクルに乗せられない、しかし大きな効果を期待できるわけでもない理屈だけのコミュニケーションシナリオは当然淘汰されていくでしょう。
冒頭のクライアントが期待したオートメーションとは少し違いますが、分析からのセグメント抽出と施策設定はある程度自動化できると思います。
まだまだ個別対応の観はありますが、DataRobotのようなツールをMAに連携して機械学習による分析結果を実装するケースも増えてきました。
一方ではAmplitudeのような、顧客行動分析からセグメント抽出、MAへのデータ連携の自動化を可能にする新世代の分析ツール(Customer Intelligenceと呼んでいます)も出てきました。こちらはディレクタスでも導入・運用のお手伝いをしています。
来たる2月2日、ゴルフダイジェスト・オンライン様でのAmplitudeのPOCをウェビナーでご報告する予定ですが、「本当のマーケティングオートメーション」に対する一つの答えなのではないかと思っています。
今年もディレクタスはデータに基づくコミュニケーションで素敵な顧客体験を実現することに全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。何卒よろしくお願いいたします。
この記事を書いた人
岡本泰治 株式会社ディレクタス 代表取締役
京都大学卒業後、株式会社リクルートを経て1993年ディレクタスを設立。
航空会社や自動車メーカーなど大手企業のEメールマーケティング戦略を立案・実行し、近年ではマーケティングオートメーション(MA)の導入支援やシナリオ設計、MA導入後のOne-to-Oneクロスチャネル展開設計など、常に最新のソリューションと長年培ってきたノウハウをもとにOne-to-Oneマーケティングを推進。