マーケティングコラム
<後編>では、One-to-Oneマーケティングにおいて重視することや、長期的な視点について再確認していきます。
さて、このOne-to-Oneマーケティングにおいて重視するのは「市場シェア」ではなく「顧客シェア」です。
顧客シェアとは、顧客一人一人における自社製品のシェアのことですが、例えばAさんが買う花が常にD花屋店なら、D花屋店のAさんにおける顧客シェアは100%です。
顧客シェアを重視するということは、例えばD花屋店がその街の生花マーケットの5%を獲得するためには、花を買う全住民に20回に1回(5%ずつ)自分の店で買ってもらうことを目指すのではなく、必ず自分の店で買ってくれる常連(顧客シェア100%)を5%獲得することを目指すという考え方です。
お客様と良い関係を築いて常連のお得意様になってもらい、長期的に購入を続けてもらうことがOne-to-Oneの目的なのであって、一人一人に合った情報やサービスを提供するのはそのための手段です。ですから、One-to-Oneといっても必ずしも一人一人に異なるコンテンツや商品を用意する必要はなく、例え多くの人に同じ物をお勧めしていても「これは自分にぴったりだ。このお店はいいなあ。」とお客様感じていただくことが重要なのです。
脅迫的なOne-to-Oneコミュニケーションにならないために
One-to-Oneの顧客体験とは、マッチングの問題だけなのではなく「自分のことを覚えていてくれた」「自分のために選んでくれた」「特別扱いしてくれた」という気持ちの問題でもあります。
現在のOne-to-OneコミュニケーションはLTV(Life Time Value、生涯価値)のような長期的な視点からよりも、短期的にROI(Return On Investment、投資利益率)を最大化するための武器として活用されることが多く、実際に効果を上げています。
しかし、One-to-Oneチャネルが拡大する中でコンバージョン1件あたりにかかった広告費用や商品購入率のような指標だけを追求すると、マッチングの精度がいかに高くても結果的には半ば脅迫的な(どこまでも追いかけるような)One-to-Oneコミュニケーションに行きつく可能性があり、最終的には顧客から嫌われてしまい積極的なパーミッション(承諾)を得ることは難しくなるでしょう。
また、最近よく使われている「カスタマーセントリック(Customer Centric、顧客中心主義)」という言葉どおり、いまや消費者がマーケティングの中心にいると考えるべきで、その結果、長期的に顧客との関係を築きLTVを最大化するという本来のコンセプトに基づくOne-to-Oneコミュニケーションが、改めて注目されていると思われます。
One-to-Oneとはパーソナライズのことではない<前編>はこちら >>
この記事を書いた人
渡辺 知子
広告代理店勤務を経て、2005年、ディレクタスに入社。 航空会社や電機メーカー、タイヤメーカーなど大手クライアントのEメールマーケティング企画制作やPDCAサイクル運営サポート、コンテンツ企画、WEBサイト運営などを経て、自社のマーケティングに従事。